naebono Talk 「アート・アドバイザー 塩原将志に訊く!!アーティスト、ギャラリー、コレクターのリアルな場」

タグチコレクション 球体のパレット 関連企画
naebono Talk
「アート・アドバイザー 塩原将志に訊く!!アーティスト、ギャラリー、コレクターのリアルな場」

ゲスト:
塩原将志(アート・オフィス・シオバラ 代表取締役 、日動コンテンポラリーアート顧問)
田口美和(タグチ・アートコレクション代表)
聞き手:
山本雄基(画家、なえぼのアートスタジオ運営メンバー)

トークについて:
2019年11月19日から、札幌芸術の森で開催されている「タグチ・アートコレクション 球体のパレット」に先駆けて、
2019年11月15日にnaebonoにて、
長年タグチ・アートコレクションのアドバイザーを務めている、塩原将志さんをお迎えした特別トークイベントを行いました。
そもそもアートアドバイザーとは?という話から、今までに体験してきた具体的なエピソード、
後半はタグチ・アートコレクション代表の田口美和さんも加わり、
コレクターとアドバイザーそれぞれの立場から見えてくるアートの現場について、
リアルな詳細を語っていただきました。
特に若手のアーティスト、ギャラリスト、コレクターにとっては、示唆に富んだ内容となっています。
ウェブ用に加筆・修正を加え、全6回に分けて、
そのトークの内容を紹介します。ぜひご覧ください。

第1回 自己紹介、アート業界の基準、アドバイザーについて、作品を買う基準
第2回 画廊について、コレクターについて
第3回 ジェフ・クーンズを例に、オークションの話
第4回 塩原、田口、山本、クロストーク 前編
第5回 塩原、田口、山本、クロストーク 後編
第6回 タグチ・アートコレクションについて + 質疑応答

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参考:
タグチ・アートコレクション
https://taguchiartcollection.jp

『タグチ・アートコレクション 球体のパレット』 札幌芸術の森美術館
会期2019年 11月 19日(火)~ 2020年 1月 13日(月祝)
時間午前9時45分〜午後5時(入館は午後4時30分まで)
会場札幌芸術の森美術館
https://artpark.or.jp/tenrankai-event/globe_as_a_palette/

アート・オフィス・シオバラ
http://artshiobara.com
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第1回  自己紹介、アート業界の基準、アドバイザーについて、作品を買う基準

山本:

本日は悪天候の中、お集まりいただきありがとうございます。

今回は、11月19日から札幌芸術の森美術館で始まる、

「球体のパレット タグチ・アートコレクション展」の関連企画ということで、

長年タグチ・アートコレクションのアート・アドバイザーを担当しておられる塩原将志さんをゲストにお迎えしまして、

マーケットのいろんな裏側を、とことん聞いてみようと言う機会になっています。

 

では早速ですが、時間も限られていますので、

もう自己紹介からご本人にお任せして、

塩原さんがどういったことをされているのかをプレゼンテーションしてもらいますので、

よろしくお願いいたします。

塩原:

こんにちは、塩原将志です。

今日は、まず私の自己紹介を兼ねて、

アート・アドバイザーとはどういう仕事をしているのか、というところから、

アートマーケットの話と、

それから先日、雑誌やニュースで話題になっていたジェフ・クーンズのラビットの裏話をさせていただいたり、

それから私が作品を買う基準とか、画廊(=ギャラリー)を選ぶ基準を少しお話しさせていただきたいと思います。

スライド1

今みていただいてるのが、私が唯一リプレゼントしている友人のヴィック・ムニーズというアーティストの作品です。

彼はリオデジャネイロのパラリンピック開会式のアーティスティックディレクターなどもしておりまして。

これは彼の個展のオープニングのアフターパティーで一緒にカラオケに行った時、私がこの格好をしたので、
その姿を作品にしてくれたものが、私のポートレートになっています。

 

スライド2

この写真はニューヨークの69丁目セカンドに新しくできた地下鉄の駅で、

MIT (ニューヨーク・メトロ)からヴィック・ムニーズが依頼を受けて壁画を作ったんですね。

実はこれもモザイクで出来た私の肖像で、その隣に描かれているのがヴィックの息子です。

もしNYに行かれることがあれば、あそこにずっと私が立っていますので、

写真撮ってアップして「塩原さん見ましたよ!」って言ってください(笑)

(会場 笑)

ヴィックとは、友達のような家族のようなお付き合いをしているので、

いつでもこうやって、家族の横に並べてくれるようなことを、嬉しく思っています。

では私の自己紹介といいますか、私がなぜ、ディーラーになったかという話をさせていただきます。

私は今年で57歳、、、実は普段はこういうことはしないんですが、この自己紹介の資料、

先日キッズベースキャンプというところで、子どもたちにアートの話をして欲しいという依頼があって作ったものです。

「好きなもの」っていうのが漢字じゃなくて「すきなもの」ひらがなになっています。

(会場 笑)

好きなものは、アートと、スキーと、インラインホッケー、肉が大好きです。

あと家族と友達が好きで、好きなものはたくさんあるんですけどね。

苦手なものは漬物が嫌いで、、、まあこの辺はちょっと飛ばしておきましょう(笑)

 

スライド3

私は群馬県の赤城山というところで生まれました。夏はこんな感じ涼しく、冬はとっても寒いところです。

スライド4

ですから子どもの時、2歳6ヶ月でスキーを始め、これは祖父なんですけども、、、

これは小学生のスキー大会です。

北海道は勿論スキーが強いところですね。

私は冬の間は学校帰りに毎日スキーばかりしていました。

スライド5

12歳の時、赤城山にはリフトも無い小さいスキー場しかないし、もっとスキーの強いところに行きたいなと思い、
水上中学校に越境入学しました。

そこでたまたま先輩に誘われてロシニョールというスキーメーカーのトレーニングキャンプに参加したら、

フランスから来たコーチにスカウトされて、フランスまで連れて行ってくれることになったのです。

この写真がその時のキャンプに参加したときです。

その時に日本とフランスとの違いを目の当たりにして、

子どもながらに「ああ世界ってこういうところなんだなあ、強くなるにはこうするんだ。」って思いました。

自分が滑っていた小さな世界からヨーロッパに連れて行かれて、ヨーロッパで強い人たちはこういう練習やってるんだ、

じゃあもうちょっとここをこうしてみようかなってことで、いろいろ勉強して、、頑張って、、

スライド6

ナショナルチームに入ることになりました。

高校生の時にワールドカップにも出たりしました。

スライド7

大学一年生の時に、学生選手権で優勝して、ユニバーシアードの代表も決まっていて、
全日本ナショナルチームで海外遠征もしていたんですが、、、

スライド8

調子こいて交通事故を起こし、正面衝突、全身打撲、膝蓋骨骨折、大腿骨骨折大腿四頭筋切断ということで、
6ヶ月の入院でした。

その後2年間リハビリして競技は復帰して続けてはいたんですけども、、、、
スキー選手としてはそこでダメになっていました。

選手を辞めて、その後どうしようかなーと考えて、

実家が赤城山で山荘をやってるので、長男だしそこを継ごうとホテル専門学校に通い、
観光業やホテルの経営について学びました。

卒業後に北海道にできる地中海クラブの村長(支配人)候補として就職が決まっていたのですが、、、、、、
まあそこで美術商になるんです。

スライド9

実は、アートとかギャラリーとか24歳くらいまで全く知らなかったんですね。

ただ、ヨーロッパ遠征行くと、トランジットで滞在するパリなどで、
ジョギングしながら当時美術館が無料だったので立ち寄ったりしたことはあります。

あのー、美術館には可愛い娘(こ)が見に来たりしているもんで、
じゃあちょっと、、、、見に行こうかって美術館に、、、、、、。

(会場笑)

もう一つ決定的なことがあって、
当時たまたまお付き合いしていた女性が、画廊の関係の人だったんで、

じゃあちょっとこの女性のためにやってみようかな!ってことで、
画廊、美術という世界に24歳で入ることになりました。

今年57ですから、もう30年以上になります。

銀座の日動画廊に入りました。

2年ばかり下積みをして、その時ちょうどバブル・エコノミーだったので、

その後、いきなり海外に出向となりました。

NYに行って、買い付けをするのが大方の仕事でした。

印象派、近代の作品を扱っていて、この時海外でかなり点数を買い付けていました。

だから買うことの大切さと言うんですかね、厳しさがわかります。

美術商にとっては仕入れが命で、
良いモノさえ買えれば同時に売れたも同然、必ず商売はできる。と思うようになりました。

ですから、仕入れの大切さ、作品を見ることの大切さ、調査をすることの大切さをその時に学びました。

それとレオ・キャステリ、ご存知の方いらっしゃいますか?

彼は1950年代からNYでギャラリーを始めてるんですけど、
ウォーホルやラウシェンバーグ、リキテンシュタテイン、ケリーなどは、
全部キャステリが扱ったアーティストです。

今や、美術史上に輝くアメリカを代表するアーティストたちばかりです。

彼のギャラリー所属アーティストの作品は、世界中の美術館に収まっております。

私は幸運にも、NYに行った時に、晩年の彼に会うことができたんです。

その時に、ネットワークが大切、コミュニケーションがギャラリーにとって一番大切なことなのだ、
ということを教わりました。

アートの業界の基本構造、どんな人たちとコミュニケーションをとらなければいけないのか、

どういうつながりがあってどう動いているのかっていうことを学ばなければいけないんですね。

 

スライド10

ということで、これは簡単に図にしたものです。

アート・マーケットの7人のプレイヤーというふうに考えています。

まずはアーティストが作品を創れなければ全てが始まらない。

アートすごろくっていうのは、アーティストがサイコロを振ってくれなければスタートしないんですね。

ですから最初にアーティスト。

その後に、それを販売するアート・ディーラー、それを紹介する美術評論家。

アート・ディーラーの中にはもちろん、
プライマリーギャラリー、セカンダリーギャラリー、プライベートディーラーっていうのがあります。
これは後に図で説明します。

それから私のようなアート・アドバイザーやアート・コンサルタント。

それから田口さんのようなコレクター、買う人がいなければ、マーケットというのは成立しません。

それとオークション会社、セカンダリー(二次販売)ですね。

二次流通がなぜ必要かっていうと、
プライマーギャラリーでの販売価格は、プライマリーギャラリーとアーティストが付ける値段で自分達が決めているんです。

セカンダリーでは買い手の判断も入ってくる。作品自体の価値が一人歩きするんですね。作品が一人歩きしないといけない。

なぜかというと、作品が交換価値を持たなければ、マーケットというのは絶対できないのです。

ですから、オークションというのもアートマーケットの大切なプレーヤーひとつなのです。

それからもちろん、美術館はアカデミックな価値を付けるところ。

例えば、市場(マーケット)の金銭的価値を付けるところをギャラリーとかオークションとするならば、
学術的や美術的な価値を付けるところが美術館です。

ひとつのアートマーケットではありますけど、それぞれ役割が全く違うのです。

そこ(美術館)にディレクター、キュレーターがいます。

で、最近、アートフェアっていうのは皆さんご存知かと思います。

このアートフェアはかなり影響力をつけてきて、私はこれを8つ目のプレーヤーとしています。

世界中の各都市でアートフェアが開催されています。
各地のギャラリーが一堂に集まってそこで作品買う人の数も多くなっています。

昔はあまりアートフェアってなかったんですね。
ここ20年くらいで、アートフェア雨後の筍ように増えてきていて、その重要性が高まっています。

スライド11

これが、相関図です。

まずアーティストが作品を創る。

でここが、日本の場合は曖昧なのです。
海外ではアーティストはプライマーギャラリーに所属していて、
プライマーギャラリーはアーティストのプロモーターであり、

最初に作品を販売するところなのですね。

そこからコレクターやセカンダリーギャラリーに作品が流れる。

海外でも、時々チャリティとかそういうことで、出品されることがありますが、
基本的にアーティストがオークションに直接出して、最初に価値づけを買手に任せることはないのです。

プライマリーギャラリーが責任を持って美術的価値と資産的価値も付ける。要するに作品価格はそこからスタートする。

ですからプライマリーギャラリーっていうのはすごく重要なところなのです。

「値付け」っていうのを皆さん簡単に考えるのですが、
プライマリーギャラリーでの最初の値付けっていうのはすごく大切です。

勿論高すぎても売れないし、後に値崩れの原因となる。安すぎても活動が続かない。

アーティストの作品を一番最初に理解して販売するのはプライマリーギャラリーなのです。

したがって、きちんとプライマリーギャラリーと繋がるっていうことは海外では当然のように思われていることなのです。

私たちアートコンサルタント、セカンダリーディーラーは、そこ(プライマリーギャラリー)から買う。

私は契約しているプライマリーギャラリーを飛び越えてアーティストから直接買うことはありません。

なぜかと言うと、プライマーギャラリーの活動を応援することはアーティストを応援することと一緒なんですね。

アーティストとギャラリーの配分が50パーセント50パーセントだとしたら、

ギャラリーの取り分50パーセントには、ギャラリーを運営し、アーティストをプロモーションするという仕事がある。

そのことに対してお金を出さなければ、ギャラリーは続けられないし、アーティストは人々に知られていかない。

そうするとアーティストが自分たちでそれをやらなければならない、っていうサイクルになってしまう。

だから、私は直接アーティストと付き合いはあるかもしれませんが、直接アーティストから買うことはなく、

ギャラリーを通して必ず買うようにしております。

また、作品は勿論オークションでも購入します。

だいたい皆さん、この感じはわかりますでしょうか。

 

スライド12

先ほどの申し上げた通り、私はアーティストと付き合いは沢山ありますが、
直接アーティストから買うことはなく、プライマリーギャラリーを通して必ず買うようにしております。

この位置の関係なんですけれども、

実は、アーティスト、美術館、ギャラリー、っていうのは、これは制作、販売、プロモーションするところ。

田口弘さんのお言葉を借りると「プロダクト・アウト」、すなわち売る側なのですね。

この人達は1年間365日とまでじゃないかもしれないけれど、ほとんどの時間をアートと付き合っている人たち。

ただコレクターの多くは、何かしらの仕事を持っていたりとか、企業で働いていたりして、
アートに費やせる時間、それを調査する時間は限られているのです。

田口美和さんのような方は「フルタイム・コレクター」と私は言っていますが、
美和さんのようにフルタイムでやられている方は少ないのです。

そのためにアドバイザーが必要で、位置とすると(図 参照)、、、
コレクターに近いところが私の立ち位置になっています。

コレクターにアートの世界で今どんなことが起きているかって情報を提供して、
コレクションにとってどういう作品が良いかをお勧めする。

アーティストやギャラリーよりも、コレクター寄りのところにいるのが、私の仕事の内容になっております。

 

スライド13

私が、どんなことを作品を選ぶ基準にしているかっていうのを、ここでお話しさせていただきます。

まず、「良いな」思う作品っていっぱいあるんですよ。

だけど、はっきりしたロジックで言えるわけではないのですが、

歴史の中に残っていくか、どうだろうか? っていうことを最終的な判断にしているといいますか、
作品を見る時には、すごく重要です。

好きな作品、良い作品って沢山出てくるし、例えばスキーでも、他のスポーツでもなんでもそうで、

好きな選手、良い選手はいっぱい出てきても、歴史に残るっていうのは少ないですよね。

好き嫌い、もしかして良い悪いも その時の状況判断でしかないようにも思えたりします。

よく考えてみると、今皆さんがMOMAやメトロポリタン、ポンピドゥセンターやルーブルなど、
大きなコレクションのある美術館に行くと、

そこには歴史に淘汰されずに残った作品、運良く人の手を渡りながら生き延びた作品があるのだと感じませんか?

「残る」っていうは過去に向かってもそうですし、未来に向かっても考えることになる。

ですから、「この作品は残るかどうか?」 っていう感覚で作品を見ると、選ぶときにはっきりすることがあるのですね。

というわけで、「残る」って感覚を、すごく重要にしております。

もう一つ、作品は良いけど、値段が高くならないっていうのもありますね。

マーケットではみんなが欲しいもの、買いやすいものじゃないと、動かしにくい(売りにくい)。
やっぱりなかなか高くなっていかない。

これはもう美術品とはいえ商品とすれば当然の話で、そういうことはあるのです。

ただ、美術的価値と価格が完全に一致しているわけでもないのですが、

マーケットでの価格というものは、アカデミックの価値の裏付けによって支えられてくるのですね。

例えば一部の中国のアーティスト達の作品価格が一時急激に上がって時期がありました。

その後下がっちゃったのですが、

彼らは何千万っていう金額になっても、一度も美術館で展覧会をしたことがない。

コレクターやアートマーケットの投機家がこれは高くなるだろうっていう期待感で競い合って買っていたけれど、
そこにアカデミックな裏付けが無いのですね。

価値を担保する柱が無いのです。だから落ちたときにはなかなか価格は戻ってこない。

ですから、私は、美術的価値と価格が完全に一致するわけじゃないけれど、
どちらの評価もしっかり見ていかなければいけないと思っています。

今の”残る”って、ちょっと抽象的な話でしたね。

判断基準ということになりますと、

まず、「希求テーマ」。

何を扱うか、どういった事柄を扱うか、その人(アーティスト)はどんなことに興味があるか、、、っていうことは、
すごく重要ですね。

例えば、アーティストが「これが好きだから」って言うのだけれど、

その「好き」をよく考えると、実は ”なぜ好きか” っていうことが必ずあると思うのです。

私が知りたいのは「Why」なんです。「なぜ」その作品を作っているのか、
「なぜ」それが好きなのか、そこが知りたいのですね。

どう作ったか 「How」っていうことは、手段でしかない。

「なぜ」 その人たちはそれに本当に興味があるのだろうか、それをどうやって調べたのだろう、

それに対してどんなリアクションしたのだろうか、っていうことが大切で、それが、「希求テーマ」です。

もう一つは、対象に対する「洞察力」ですね。どうやって、どこまで調べたか、深度や探求心を見ます。

例えば、変な話なんですけど、

アーティストのスタジオに行ったときに何の本読んでいるのだろうか、何を見ているんだろうか、本棚を最初に見たりもする。

コレクターがコレクターの宅に行ったりすると、どの本が本棚に並べてあるかな、どこから本が届いているのかなっていうのを見たりするのと一緒で、

その人の頭の中に何が詰め込まれているんだろう、っていうのを考えますね。

っていうのは、食ったモノしか出てこないのです。アイデアは天から降りてくるものじゃなくて、

その人が食べたモノが消化されてしか出てこないから、
どんなモノを食べてるいるのだろうかっていうのはものすごく気になるところです。

希求テーマと洞察力、そしてそれが表現につながる。それも的確で適切な表現!

表現方法っていうのはまあ、今日はアーティストの方が多いみたいなので、細かいことはちょっとお話ししません。

それ(希求テーマと洞察力)をどう表現したかっていう部分で、見た目(表層)だけでなく、裏に回って(レイヤー)

それを、なぜそうする必要があったのか? 必然性を考え、見るようにしています。(17:14)

さらにもう一つ重要なのが、「同時代性」っていうのですかね。

ここに「歴史」それから「問いかけ」「美」とありますけれど、

実は今出来た作品って、今残す価値があるから残さなきゃいけないのです。

現代っていうか、今の社会、今の時代っていうのがある程度映っていないと、

今残さなくてもいい作品になるのですね。

だとすれば、「同時代性」があるかどうかっていうのは、現代美術においてはすごく重要だと思っています。

普遍的な考えっていうこともあるかもしれませんけれど、普遍的って過去から今を通って未来へつながっていくものです。

そのときに、縦を時間軸にして、横は今、この横の線はどこで縦(歴史)と接点があるかです。

「問いかけ」というのは先ほど話したことに戻りますね。

「美」というのは、例えばベーコンとか、綺麗とか かわいいとか、そういう絵じゃないのですよね。

でも、あんなえげつない絵でも美しいなって思える何かがある。

そこがもしかしたら、残るっていうことにつながるのかもしれないのですが、

なぜ美しいと感じちゃうのか、美しいと感じる根拠については、すごく考えます。

とするならば、アーティストが歴史や美術史や社会に対して、批評性をきちっと持っているか。

批評性っていうのは、ただ批判するっていうことじゃなくて、きちっとそれに向き合って、

それから自分なりの考えをもっているかっていうことですね。

ここについては、アーティストと会って話ししたりとか、出ている文献を読んだりして、すごく学ぶように心がけています。

日本と海外ってどうしてもちょっと違うなと考えているのは、

日本って、、、 西洋では18世紀にファインアートっていう考えができた。
皆さんもう美術を習っているならご存知だと思うんですけど。

そうすると、アジアでは機能や用途と完全に離れた美、ファインアートっていう考えは無かったんですね。

だから、技巧や技術が重要な判断基準になっている。
日本やアジアのそういう感じは良いところでもありますが、時として悪いところでもあるんです。

西洋のアートマーケットをターゲットに本当に考えるのであれば、

美術が実用品(機能、用途)から全く離れ、技巧や技術が判断の最重要事項では無いことも考えないと受け入れられない。

日本人の作品であれば、この作品がインターナショナル(西洋)に受け入れられるかって考えると、そういうところもちょっと見るようにしています。

ここら辺まで、大丈夫でしょうか。

(第2回に続く)

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